神々の盟約により、『春の新緑の恵みの侯』の領地は、年の三分の一を『荒ぶる雪の 嵐の王』による吹雪に閉ざされる。春の訪れの直前、吹雪の合間に催される目覚め の祝祭。その小祭司を勤めた事が、シュラクァの運命を決定づけた。術師として領 神に仕える事となったシュラクァの視る世界とは…… 『目醒め』 「まだだよ、寝ていて」毛布の隙間から入り込んだ冷気で目を覚ました俺に、窓際に 立った黒い影が優しげに言った。昨夜の溶け合いの余韻を感じさせるような、甘い 声。黒い影がそっとにじり寄り、体を起こした俺に腕をからめてくる。だが俺は、 情事の続きよりも少し話がしたかった…… 『夜明け前』 魔術師スワロー・サインは空を飛んだ。頭の中で呪文の詠唱が終わると、体の重さ が消え、体は夜のビル街を飛んでいった。サインの祖霊である、燕の飛跡と同じよ うに。組織の命令で、サインはビッグ・ジョウと共に裏切り者を追跡していた。組 織の元処刑者、「シュライク・ジュノー」を。 『鳥は翼で空を飛ばない』 奈緒は幸福感に包まれた朝を迎えた。隣りで眠る雅弘が、昨晩「結婚しよう」って 言ってくれたから。しかし、目覚めた雅弘との会話が微妙にかみ合わない。昨日は 五月二十日の土曜日、だけど、食卓の傍らのテレビは、今日も五月二十日の土曜日 だと告げていた…… 『風、過ぎる朝』 僕はかつて、世界の全てを信じていた。父を、祖国を、総統を信じていた。しかし、 現在の僕はどれも信じていない。全てを捨てて、女性の元に馳せ参じようとようと している。まるで、愛妾と引き替えに異民族に祖国を売った中国の将軍みたいに…… 『運命を変えた三時間』 何かが始まる、また何かが終わる時刻。夜明け前を描く五編の短編を収録。
作者 | 作品名 | 挿絵 |
白霧草 | 目醒め | − |
小川一水 | 夜明け前 | 村山慶 . |
真冬真 | 鳥は翼で空を飛ばない | − |
広沢りょうた | 風、過ぎる朝 | ROMY |
村山慶 | 運命を変えた三時間 | 村山慶 |
オフセットA5サイズ |
表紙デザイン:Teddy's Cage |
総項数:102ページ |
価格:600円 |
発行:Progressive |
発売:ジャンク・ヤード |
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