夕月思惟穂は、必死の思いで発車しかかったバスに駆け 込んだ。彼女は友人との挨拶もそこそこに、鞄から大帝 国情報通信技術研究所製十六式蒸気式演算器を引っ張り 出す。そして彼女の指は、猛然とキーを叩き始めた。 宿題を片づけるために。 ――『代価』 「あなた、バスを待ってるの?」 透明な塩化ビニルで囲まれた田舎のバス停の待合所で、 私は声をかけられた。甘ロリとでもいうのだろうか、場 違いな服装の彼女は私の事を知っていた。しかし私は、 彼女の事も、自分がなぜここに居るのかも判らなかった。 ――『やみの引くそで』 普段は自転車通学の沙樹がバスを待つのは今日が二度目 の事だった。バス停で所在無げにしている彼女の前を通 りがかったのは、毎朝顔を合わせる、自転車通学の少年 だった。 ――『彼女の風景』 いつも乗るより二十分早いバスの、乗って正面の三人席 がその席だ。 純は今日もその席を独り占めする。 毎朝その席に並んで座る二人のじゃまをするために。 ――『フラットライン・トライアングル』 ある田舎のバス路線。そこで織りなす四つのストーリー。
作者 | 作品名 | 挿絵 |
Teddy's Cage | バス停のある風景 | |
村山慶 | 代価 | 村山慶 |
真冬真 | やみの引くそで | 天野拓美 |
早坂千尋 | 彼女の風景 | ROMY |
白霧草 | フラットライン・トライアングル | 天野拓美 |
オフセットA5サイズ |
表紙デザイン:Teddy's Cage |
総項数:74ページ |
価格:500円 |
発行:Progressive |
発売:ジャンク・ヤード |
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